春の天の川

春の天の川です。

以前の展示会で、
東洋アルミニウム株式会社(TOYAL)さんの
クロマシャインとのコラボレーションで、
独特の光沢感のある夜桜の作品を作りましたが、
現在はTOYALさんの新しいメタルシャインと
コラボする色んな作品を実験しています。

クロマシャインは、
角度によってさまざまな見え方になる
パウダーで、玉虫色のように輝いたり、
フレンドカラーと言って、
まるで深い海のような青色も出せます。
工場見学でその輝きを見た時、
国立科学博物館でみた蝶の
モルフォチョウのことを
思い出しました。
うっとりするほど美しい青の
モルフォチョウですが、
あの青には色素がないんです。
ミクロンの世界の繊細な構造によって
色がついているように見えるだけなんです。
アルミニウムから、
クロマシャインのような繊細で
美しい色が生まれるなんて、
ミクロンの世界のことをどんなに説明されても、
自分では作れないし、不思議でなりません。
でも、構造によって生まれる色には、
色素でつく色の世界にはない、奥行があります。

クロマシャインも蝶も
このミクロが感じさせてくれる奥行は、
星空ととても似てます。
長野県でみた星空や、
コニカミノルタの
ドームシアターDOME2でみた星空は、
いつも見上げていた真っ黒な空の中にある
いくつかの点とは、まったく違いました。
空というか、宇宙には奥行があるんだ、
という感覚です。
空は私たちの上にある薄っぺらいスクリーン
みたいに思えてましたが、
見えていないだけで
空にはその先が果てしなく続いてます。
自分が星空の一つの地球の中にいるなんて、
小さな自分の生きる場所からすると、
ほとんど気が遠くなるほど広い世界が
宇宙には広がってるんだと感じました。

その時の感覚が、
クロマシャインの輝きの中にある
奥行ととても似てます。
もう溢れそうになってる、
満開の桜にも似てます。

駅のホームから見た満開の桜は、
遠くからなので真っ白ですが、
あそこには小さな1センチほどの
半透明の花びらだけで、
真っ白に見える程の数の花がぎっしり詰まってます。

あー。この感覚を作品にしたいと思って、
いつも制作しています。

クロマシャインのミクロンの世界にある
細かなパウダーたちには、
星空みたいな奥行きがあります。
写真は2次元ですが、
クロマシャインそのものの輝きが、
写真の世界に奥行をくれます。

ローレフォトで表したいのは、
別々の場所や時間、
目には見えないけれど、
その向こうにあるものの、
視覚的な時間と場所の奥行体験です。
日常生活を、
ほんの少し奥行をもって見たら、
違って見えてくるかなと思います。

私たちが見ている天の川は、
色んな時間に生まれた星が
同時に見えてます。
その星空と同じことを、
ローレフォトで創り出すことで、
あの天の川に包まれた時の感覚、
いくつかの時間が重なって、
初めて現れる色が、
できるんじゃないかと思って、
日々作ってます。

枝だった桜が、
満開になると真っ白になり、
枝分かれで何層にも折り重なり、
深くて遠い世界が広がって真っ白になります。
その先には散っていく花びら、
そして桜だけが春の花じゃないです。
春に咲く花がつぼみになって、
咲いて、散っていく、
そういう春に起こることを、
それぞれの時間を、
天の川の星のように重ねています。


写真はプリントすると、
インクの色になりますが、
クロマシャインだったら、
色素ではない色なので、
もっと天の川に近づける気がしています。

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